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佐賀県唐津市のフリーペーパー「からっちゅ!」のブログ

波戸岬の甘辛くて柔らかーいサザエやイカと優しいお母さん達

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皆さんこんにちは!からっちゅ制作の原です。

 

今回は、唐津の皆さんなら写真を見ただけでどこで食べられる何なのか、何となく察しがつかれるのではないでしょうか?

この炭火の上でじゅわじゅわと湯気を立てながら焼けていくこの「サザエのつぼ焼き」とそれを毎日焼いていらっしゃるお母さん方についてご紹介します。

 

波戸岬の海、ハートのモニュメントがある波戸岬別名ハート岬には、荒々しくも綺麗な波戸岬の海を一望できる場所があります。

ここでは、海を一望できるだけでなく、海水浴場で海を楽しんだり、ハートのモニュメント前で記念撮影が出来たり、近くには海の中の様子を見ることが出来る「玄海海中展望台」もありと、波戸の海をとことん楽しむことが出来る人気スポット。

ちなみに余談ですが、「波戸岬」という名称はこの地域名「波戸」からきています。

 

 

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海水浴場と桟橋。とてもきれいな海です。

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風が強いので夏でも心地よい場所です。右に見えるのがハートのモニュメント

 

そんな波戸岬の海際にたたずむ売店がこの「波戸岬サザエのつぼ焼き売店」です。

こちらも現在では観光スポットの1つとして地元だけでなく、県内外から食べに来られる名スポットにもなっており、正面にある大型の無料駐車場が満車になることも少なくないほど、毎年賑わいが見られます。

と、波戸岬の簡単なご説明はこのあたりまでとして。

 

今回、取材に行くきっかけとなったのは、私が紙面への掲載依頼のためにかけたお電話からでした。イベント情報コーナーに夏のおすすめとして掲載させて頂こうとお願いさせて頂いたところ「ではよかったら来ますか?」と嬉しいお言葉を。もうその場でスケジュール確認して「ではぜひ明日にでも!」と翌日にはカメラ片手に飛んで現場へ向かってました。

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売店の外観。波戸岬の海手前にあり、目の前には数十台停められる無料駐車場があります。

さて、若干脱線してしまいましたが、

現地へ行くと早速「取材ならまずは食べてみて」と豪華にもサザエとイカを頂くことが出来ました。ひょっこり電話してひょいひょい訪ねてきた私に対してここまでして下さる皆様。本当に優しいお母さん方です。

 

なお、こちらのサザエを始めとする海の幸は、目の前の炭火の焼き台で焼いて提供していただいており、焼き手はお母さん方となります。

では、頂きます!

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サザエ1皿500円(税込)

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イカ焼き1皿500円~600円(税込)

もう言葉にならないくらい絶妙な美味しさ!大げさでなく本当にサザエの概念が覆されました。

たれは醤油・酒・みりんを合わせたもので、サザエから出る塩味と丁度良くなる塩梅で作られています。これが甘くてコクもありすごく美味しい。

更に言うと、すごく柔らかくて香りもよく、貝類にはたまにある「ジャリ」というトラウマにもなりかねない嫌なあの食感も全くありません。(ここのサザエは砂が入っていることはほぼ皆無だそうで、そこも売りの1つとされていました。)

私もスーパーなどで購入したサザエをバーベキューなどで焼いて食べたことはあるのですが、正直硬くて、熱くて、塩辛くてとあまり好きではありませんでした。(私の味付けがよくなかったというのが大概の原因ですが(^-^;)

お母さん方に伺ったところ、「酒と醤油だけをかける方が多いけど、焼いてたら中から塩が出てくるから塩っ辛くなるの。みりんを入れた方が美味しかとよ」と。

 

続いてイカ焼き。こちらのたれはサザエと同じものだそうですが、サザエのように塩味が出ないため、少し甘め。

でもそれが炭火で焼いたイカの香ばしさととても相性がよく、すごく美味しかったです!

ちなみにこのイカは一夜干しとなっており、お母さん方手作り。朝さばいて店頭に干してつくるそうです。

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店の奥で干して作られていたイカ一夜干し。そのままでも美味しそう。

その上にある「飲酒運転」の警告は全てのお店にかけてありました。

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サザエの身をなかなか取り出せずにいた私のために、別途綺麗にとれたサザエをくださるお母さん。

場の雰囲気が美味しさを際立させると言いますが、ここではお母さんの優しさが、美味しさを際立させているんじゃないかと思います。

 

なぜここでサザエのつぼ焼きを?皆さんはどこから?

と、素朴な疑問が浮かびました。唐津弁交じりで、女子トークに花を咲かせながらも慣れた手つきでサザエを焼き上げていく皆さん。いったいどこの方で、どういった経緯で始められたのか?

 

実は、ここにいるお母さん方は全員「波戸地区」の皆さんで、

この場所は、「波戸の漁師・海士さん達」のために作られた場所でした。

 

きっかけは50年前。海士さんのアイデアからです。

昔から海に面している波戸地区は、漁師町。実際、今でも近くに波戸漁港もあり、漁船がたくさん並んでいます。

海士さん達はサザエやアワビなどを獲っては卸先へ卸されていたのですが、その一方でたびたび耳にするのが「ここで海産物を食べられないか」という観光客の方の声。

 

そこで「地元の海で獲れたものを地元で食べてもらうようにできないか」とサザエ小屋を企画。波戸地区で協議したのちに、現在の場所を地区から借り、漁師と海士さん達でこの場所を作ることとなったそうです。

そしてその時焼き手として手を挙げられたのは、現役の海女さん~海士さんや漁師さんの奥様方である女性陣です。

早朝より漁や漁の手伝いをしながら夕方まで焼き手を務められる・・・想像しただけでいかに大変なことだったのかが伺えますが、皆様が頑張られてきたからこそ、今の波戸地区があるのだと思います。

 

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今でも波戸の海士さん達が獲ってきたサザエを提供されています。ホースから流れるのは裏の海から引いた海水。

左上にもいますが(笑)、サザエは元気がよく脱走しようとするものもいるそうです。

 

50年前の海士さん達の起点が、現在では観光名所となり、地域の新しい産業を作り出しました。こうしたことが後継者問題の解決にもつながる兆しも見せており、波戸では海士さんの跡取りとして若い方も参加も見受けられるそうです。 

 

しかし、そこで辛くのしかかるのがコロナウイルスです。

私が訪ねたのは6月下旬で、気温が徐々に暑くなり始めた時期でもあったのですが、

扇風機の風が心地よい客席側とは違い、お母さん達焼き手側の方は、マスクで暑いわ、フェイスシールドのおかげで炭火の熱や煙がたちこもるわで、慣れていない私はあっという間に目に染みて涙目に。

「こんな中焼き続けるのは辛くないんですか?」と伺ってみたところ、

「私たちがここを開けないと波戸の漁師や海士が苦労するから」と。

 

うーん。辛いお仕事だ・・なんて思っていたら、

でもね「毎年必ずお越しになるお客さんもいらっしゃるからね」と。本当に優しいお母さん方です。この場所を楽しみに毎年いらっしゃる方のお気持ち、すごくわかります。

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現在の焼き手を務めるお母さん方。

焼き手は当初より代々受け継がれており、現在、初代焼き手の方から三代目焼き手の方までいらっしゃいます。

※撮影のためにマスクはとっていただきました。

恐らく、よほどのことがない限り続けられるここ「サザエつぼ焼き売店」。

いつでも新鮮なサザエや他海産物を絶妙な味加減で焼かれています。

 

コロナウイルスが流行する今日ですが、もし海を見に行かれる予定がありましたら

波戸岬をお勧めします!ぜひ元気で楽しいお母さん方のお店を覗いてみて下さい。

 

 

と、この辺りで取材を終了しようかとも思いましたが、せっかく波戸のお母さん方が集まっていらっしゃるので、ちょっと波戸地区の伝統についても聞いてみました。

実はこの辺りの地域では、かの有名な太閤豊臣秀吉公が城を築き、全国160以上の武将たちがこの地に陣を構え朝鮮出兵を行った「肥前名護屋城並びに陣跡」の区域でもあります。

そして面白いのがここから。多くの武将が陣を構えた土地土地には、武将たちが残していった文化が今でも根付いていたりします。

この波戸地区は今でも伝統が色濃く残っている地域。どくとくの文化がありますので、お母さん方の思い出を交えつつ、次の記事にてご紹介したいと思います。

次に続く・・・

▼満潮の海で引き合う波戸の伝統行事「海中盆綱引き」と郷土料理「いのち長だご」

 karacchu.hatenablog.com

 

 

 

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波戸岬 サザエのつぼ焼き売店

時間:9時頃~17時ごろ(10時~16時間がおすすめです)

※土日はお昼より混雑する可能性が高いそうです。

ゆっくり食べたい方は平日か午前中がおすすめ!お持ち帰りもOK!

 

場所:〒847-0404 佐賀県唐津市鎮西町波戸1616−1

電話:0955-82-4774/0955-82-5972

〈提供されているもの〉※税込み価格

・サザエつぼ焼き 1皿500円

・イカ焼き(たれ・塩選べます) 1皿500~600円

・あわび 要相談

・牡蠣(冬限定※11月~) 1皿500円

・ビールなど飲み物もあります。

※旧店・新店どちらでも美味しく味わえます!

 

www.karatsu-kankou.jp

www.karatsu-kankou.jp

 

 

※からっちゅ!2020年8月号よりご紹介。

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